タカラレーベンのライツ・イシュー(5)

タカラレーベンの株価は、すでに希薄化を織り込んだ理論価格付近まで下落しています。ここから新株予約権の権利落ちがあることを考慮すると、若干安くなりすぎているようにも思えます。

しかし、そもそもライツ・イシューに限らず、増資の場合に理論通りに株価が推移するかというとそうでもありません。

例えば、時価で既存株式の10%の株数を増資した場合理論価格は、
(時価×1+払込価格×0.1)÷1.1=時価
となり、理論価格には変化がないということになります。

しかし、実際には多くの場合増資により株価が下落してしまいます。
どうして増資の場合の株価は理論価格に収束しないのでしょうか。

原因の1つは、理論価格を計算する場合、株式の価値=解散価値+将来の利益の合計と仮定していますが、市場は、多くの場合、株式の価値のうち、解散価値よりも将来の利益の方を重視しているためだと思われます。

増資により希薄化すると、1株あたりの「将来の利益の合計」の希薄化が起こります。
ライツ・イシューの場合、既存株主は、新株予約権を行使すれば、持分比率は希薄化しませんが、株数が増えるので1株あたりの「将来の利益の合計」は希薄化します。

いくら、理論上は、払込によって解散価値が増えているから、既存株主は損でないですよと言われても、大多数の株主は、会社の解散価値を見て株を買っているわけではなく、将来の利益を期待して買っているのです。

そのため、増資の際によく言われることですが、その増資が将来の利益増加に結びつくものなのかという点が重要になってきます。

増資をして一時的に1株利益が希薄化しても、将来において、増資の資金を投資してそれを上回る利益を生み出せるのであれば、増資によって株数が増えても1株あたりの将来の利益の合計はそれほど減らない場合もあります。
反対に、増資の目的が、目先の資金繰りのためだったり、損失を埋め合わせるためといった後ろ向きの理由だと、増資によって株数が増えた分だけ、1株あたりの将来の利益の合計は希薄化してしまいます。

もう1つの原因は、需給の問題だと思います。
一般的には、新株が大量に出回ると、供給過剰になりやすくなります。
理論価格の計算は、こうした需給の問題を反映していません。

ライツ・イシューにしても、新株予約権の理論価格は「権利落ち後の株価-300円」となりますが、実需の買いよりも実需の売りの方が多いであろうことは織り込まれていません。

TOBや組織再編の局面では、理論価格と比較しての売買が有効ですが、増資の局面においては、株価が理論価格と比べて乖離していることを理由にする売買は必ずしも有効とはいえないように思います。

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